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【脚本・上演台本】上田岳弘(うえだ・たかひろ)

原作『キュー』の連載を開始したのは、ちょうど9年前のこと。作家として活動を始めるよりも前から、ぼんやりとしたキューの全体像が頭の中にあって、いつか書かなければならない作品であると、ことあるごとに周囲に漏らしてきました。原爆の投下、憲法九条、AIの進化等の事象間にある確かな繋がりを意識しながら書き上げた、僕自身にとって重要な作品です。

あれから9年後、『キュー』が舞台で上演されます。演出は、若い僕の創作欲に火をつけてくれた舞台『マーキュリー・ファー』を手掛けられ、『2020』で初めてご一緒させていただいた白井晃さん。瀬戸康史さんや有村架純さんをはじめ、素晴らしい実力と魅力を兼ね備えた俳優の皆さんが、時に難解とも言われてきた『キュー』を心震わせる舞台にしてくださることに、静かに興奮しています。 戦争や暴力に制御が効かないことが露呈した今の世界で上演される、それぞれが一度きりの『キュー』の舞台。多くの人々にこの瞬間を目撃していただきたいと思います。

【演出・上演台本】白井晃(しらい・あきら)

小説「キュー」が刊行されたとき、私はその世界観に打ちのめされました。私たち人類の現在の立ち位置と今後を予見する未来図に圧倒されたからです。その驚くべき視線に恐れを感じながらも、この世界をなんとか演劇という生身の表現に転化できないかと夢想しました。そして、その思いは初めて小説を読んだときから決して消えることはありませんでした。私たち人間はこれからどこに向かうのでしょうか。第二次世界大戦後の日本に生きる私たちは、どこから来て、どこにいて、この先どこに向かうのでしょうか。原爆投下の記憶を身体に持つ少女と、その状況に対峙した人物の遺伝子を受け継ぐ男の出会いは、時間を超え、空間を超え、肉体の形状をも超えてつながり続けます。効率化は、猛烈な孤独感を私たちに与えます。だからこそ、肉体を失ってもなお、愛を求めてやまないのです。原作者である上田岳弘氏の協力を得て、この作品を演劇化できることに至福の喜びを感じています。恐らく、私にとって最も重要な作品になると思います。

瀬戸康史(せと・こうじ)

演出の白井さんとは、僕の俳優人生の転機となった作品『マーキュリー・ファー』以来、十数年ぶりにご一緒します。あの時、白井さんの演出を受けていなければ、俳優を辞めていたかもしれません。それくらい大きな出逢いでした。有村さんとは 3 度目の共演です。落ち着いた癒しの雰囲気があり、内からエネルギーが溢れ出している印象です。

この『キュー』という作品も、ある人物たちの出逢いがキーワードのひとつです。僕が演じるのは立花徹という産業医。現代人を象徴するような人物です。そんな彼が、様々な人や、人のようなものと出逢い、見ようとしてこなかった自分自身を含めた物事に向き合っていく物語です。今時代は、SNS やスマートフォンの普及から情報が一気に飛び込んできて、それに加え日常生活でやらなければいけない事も多い。気がついた時には自分が何者なのかわからなくなっている。そんな恐怖を感じる瞬間があります。

『自分を失わないために、あなたはどう行動する?』

稽古に入る前の今、そんな問いを投げかけられているような気がします。

有村架純(ありむら・かすみ)

舞台への挑戦を続けていきたいと考えていたタイミングで、約12年前の『ジャンヌ・ダルク』でお世話になった白井晃さんからお声がけいただき、本当に嬉しいです。今回は恩返しのような気持ちで臨めることに、大きな意味を感じています。また、20代前半の頃にご一緒した瀬戸康史さんと、再び共に戦えるご縁も心強いです。

初めての舞台では右も左もわからず、客席に背を向けて立ってしまうような状態だった私に、白井さんは同じ目線で一から向き合ってくださいました。そんな白井さんと今、どのようなセッションができるのか、どう作っていけるのか、今からとても楽しみです。

本作は小説を原作としていますが、私たちの身体を通してしっかりと具現化していきたいです。

劇場でしか味わえない体験がお届けできるよう、ぜひ多くの方に足を運んでいただければと思います。